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MIKASA Canoe Club updated 2026-05-13

2025.08.23. 十勝川の咆哮と、消えた「T-Cup」

激流の記憶 そして受難の道中記

 2025年8月23日。十勝川上流、カヌーイストの聖地・屈足(くったり)を舞台に、第9回を数える伝統の「T-Cup(屈足記録会)」が開催されるはずであった 。昨年の好成績に胸を躍らせ、おじじ会長と私(ウェブマスター)は、勇躍として十勝の地を目指したのである 。

@平成元年のはまなす国体カヌーコースは前日の豪雨で大増水


第一章:シリアスな追憶 ―― 激流に刻まれた歴史
 かつて、南富良野・落合の空知川は、はまなす国体のカヌー競技会場としてその名を馳せた北海道カヌーの聖地 。道中、増水した旧コースを眺めれば、往時の記憶が鮮やかに蘇る 。 かつて開催されていた「カナスラ(カナディアン・スラローム大会)」、そして「メモコン(メモリアル・コンペティション)」…… 。
 パドラーたちが己の限界をぶつけ合い、飛沫の中に青春を刻んだあの狂熱の時代。かつてのナショナルチームでCC2のバウマンを務めた福永明彦氏ら、先人たちが築き上げた北海道カヌースラロームのオリジンが、そこには確かに存在していた 。
 今回のT-Cupもまた、福永が呼びかけ人となり、帯広畜産大学カヌー探検部と一緒に伝統を継承し、交流と技術向上のために復活させた魂の記録会なのである 。

@しみじみとコースを眺めるおじじとおばば


第二章:悲報 ―― 自然の猛威と「おじじキャンカー」の沈黙
 しかし、自然は時に残酷な裁きを下す。 前日からの大雨により、屈足川の水量は一気に増大 。ゲートやワイヤーの設置すら生命の危険を伴う事態となり、土曜日のレースはあえなく中止が告げられたのである 。
 だが、真の悲劇はここからであった。 「レースがダメならキャンプだ!」と意気込み、南富良野から狩勝峠を越えようとしたその時、場所はまさに旧カナスラ・メモコンの聖地にて、あろうことかおじじ会長のキャンピングカーが沈黙した。
 セルモーターは回らず、ただ虚しくカチカチと音が響くのみ。かつての猛将・おじじ会長も、動かぬ鉄の塊の前には無力であった 。結局JAFを呼び、三笠の西桂沢へレッカーにドナドナと運ばれ、戦線を離脱 。地元の整備工場にて「オルタネーターの修理」という、激流よりも高くつくかもしれない戦いへと身を投じたのであった。(※後に無事回復したとの報あり)

第三章:潜入 ―― 学生の群れとレジェンドの影
 会長を失った私はVWを駆り、単独で帯広畜産大学カヌー探検部の艇庫(本日のキャンプサイト)へと突撃した 。 そこは、若さ溢れる学生パドラーたちの魔窟。彼らの「じゃんけんをして騒ぐ」「泥靴で店を汚す」といった若気の至りに対し、近隣のセイコーマートから苦情が寄せられるほどの熱気(?)に満ちた場所である 。

@レースは無くなったものの参加者同士の交流会が開催される


 その若きパドラーの群れの中に、ひと際落ち着いたオーラを放つ人物がいた。前述のレジェンド・福永明彦氏である 。 「ダムの放流を考えれば、中止は賢明な判断だ」 レジェンドの重みある言葉に頷きつつ、私たちは学生たちに混じり、美味しいお酒と共にかつての、そしてこれからの北海道カヌーについて夜更けまで語り明かした 。

@前日の豪雨が嘘のような素敵な夕刻を迎える帯畜大キャンパス


エピローグ:T-Cupは死なず
 伝統ある「T-Cup」は、雨と故障によって「交流会」へと姿を変えたが、その精神は死んでいない 。 帯畜の若き「アソロン」や「ふぁーむ」ら実行委員たちが奔走し、オリジナルTシャツを製作し、景品交換会を企画したその情熱は、必ずや次回の激流へと引き継がれるだろう 。

@カヌー艇庫の柵にはジオンの決意書が吊るされていました

 さらば屈足、さらばJAFに運ばれたおじじのキャンカー。 我々のパドルが、再び十勝の激流を割る日は、そう遠くない 。